港珠澳大橋
港珠澳大橋(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge)が10月23日に開通したそうです。香港、マカオ辺りのGoogle Mapを見ると地図表示だと何もでてきませんが、航空写真に切り換えると、香港空港から西へ海の上に道路が延びていて、途中で途切れ、その8kmほど東側にアクアラインの海ほたるみたいな島ができています。そこからマカオと珠海のボーダーのすぐ東側に新たに造成された島まで道路が続いていて、この島からマカオと珠海につながっています。
香港空港の東側にも新たに島が造成されていて、ここが入出境のためのターミナルになっています。橋の全長は55kmで世界最長、香港からマカオ、珠海へはシャトルバスが日中5〜15分間隔、深夜でも15〜30分間隔の24時間運行、料金を調べてみると片道HK$65、1000円ほどです。所要時間が明記されていないのですが1時間かからないでしょうね。
従来のターボジェット船だと日中15分間間隔で所要時間55分もHK$171、ターボジェットの経営努力で何とかなる価格差じゃなく、トラムが並ぶ上環のターミナルの賑わいが無くなってしまうのはたぶん必至、寂しくなります。
一方、香港から北京や上海への高速列車も9月23日に開業しています。エアポートエクスプレスの九龍駅の「東側」に隣接して西九龍駅が開設されています。自分が香港に通っていた頃はずっとゴルフ練習場と広大な空地だった場所です。まだ10年ちょっと前なのに、新幹線のような高速鉄道が香港までやってくるとは当時考えもしませんでした。ましてやマカオまで橋でつながるなんて。
まだ香港空港がカイタック空港だった30年ほど前に食品の仕事で珠海へ出張したことがあります。香港から高速船で珠海の小さな港に着き、珠海の街に入ると南国情緒がいっぱい、ビンロウの並木で囲まれたメインストリートとおぼしき道路を牛がのんびりリアカーを引いて歩いていたのをよく覚えています。出張先の食品工場の向かいの飲料工場の清涼飲料水の出荷風景と眺めていると、出荷ケースに並んだボトルのドリンクの入っている高さが全然まちまちだったことを思い出します。
仕事を終え、マカオ経由で香港へ戻る際、珠海マカオのボーダーからみた高層ビルの立ち並ぶマカオを見て心底ホッとした記憶がまだ鮮烈です。それほどのド田舎だった珠海です。
それから10数年して今度はおもちゃの仕事で珠海へ行った時には、もうド田舎どころではなく、マカオを凌ぐほどの高層ビルが立ち並んでいて、度肝を抜かれました。そしてそれから15年ほど経った今、香港から珠海やマカオへバスで行けるようになってしまいました。
日本が明治維新から150年かけてきたことを、あるいは英国が産業革命から200年以上かけてきたことを、中国が30年でやってしまっている訳です。
この極めて急速な変化を香港人皆が手放しで喜んでいるかどうかは、ちょっと疑問です。早速高速鉄道に乗ってきた人のレポートによると、西九龍駅の中で入出境が一遍にできるようになっていて、境界となるところに黄色い線が引かれていてその先は簡体字の世界になっているそうです。MTRの羅湖駅で出境し小さな川を越えて深圳駅側に入境できるまで、自分たちは軽く1時間かかり、香港のIDカードを持つ友人たちをいつも長時間待たせていたという不便は無くなったものの、香港のど真ん中にまで簡体字の世界が出現したことはやはり強い違和感を感じます。
港珠澳大橋では黄色い線がどこにあるのか不明ですが、おそらく香港空港の東側にできた島の中と推測されるものの、対岸の珠海とマカオで体制が異なる訳で、どういう運営がなされているか気になります。
香港は依然グローバル経済の拠点であり、また多くの香港人は英国時代からの中国文化と融合した独特の自由な文化に強い誇りを持っています。いつまでも香港の文化が守られることを願ってやみません。もう10年以上ご無沙汰している香港の友人たちに会いたくなってきました。
上掲の香港サイト、メジャーサイトなのにいずれもスマホ対応していないようです。その辺の事情も探ってみないと。
©Uemachi Web Factory